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オリンポス債権回収株式会社(北海道札幌市)

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オリンポス債権回収株式会社
(北海道札幌市)

【写真】坂本さん、小川さん、永井さん オリンポス債権回収は2000年(平成12年)設立。債権の管理・回収業務を行っている。
オリンポス債権回収の従業員数は90名(2022年11月30日現在)。
今回は、代表取締役社長の小川英宏さん、業務本部 経理・総務・人事課 次長の坂本明広さんと永井瞭太さんからお話を伺った。

新入社員を大事に育てる方針のもと、メンター制度や人事面談といった仕組みに加えて、日々の業務の中で他の社員が自然とフォローする体制が整っている

まず、新入社員へのケアのために行っている取組みについてお話を伺った。

「10年ほど前から毎年3~5名の新入社員採用をはじめました。併せて、一人ひとりに長く働いてもらえるよう大事に育てるという方針から、メンター制度を導入しました。」

「メンターにはお兄さんお姉さん的な役割を担ってもらうため、新入社員が配属された部署の中で一番年代の近い社員にお願いしています。そのため、2年目の社員が担当することが多いのですが、人に教える立場になることで『自分はこういうところでつまずいたからこういうところを教えてあげよう』といった意識が持てるようになっており、メンター制度が2年目の社員の成長にもつながっていると感じています。」

「また、近年は、メンターに業務が偏り過ぎないように、トレーナーもつけています。トレーナーは、同じ部署の中堅社員が担当しています。」

「メンター制度がうまく機能するように、開始時に新入社員とメンター、トレーナーが集まって、メンター制度の趣旨や、どのような時に相談してほしいのかといったことを研修して、共通理解がもてるようにしています。また、日頃から気軽に相談できるように、新入社員の席の左右にメンターとトレーナーの席を配置しています。そして、少なくとも月1回は新入社員とメンター、トレーナーで話す機会を設けてもらうようにお願いしています。ただ、その方法は現場に任せているので、席での雑談になることもあれば、会議室にてじっくり話をすることもあるようです。“必要な時に相談できる体制を作る”ということを意識して行っています。」

「また、入社後3か月と6か月のタイミングで人事面談を実施しています。面談は、あまり形式張らないように、いきなり仕事の話をするのではなく趣味などの話から入るようにしています。そうしたやりとりを通じて、野球が好きなど、仕事とは違う一面を知ることができます。コロナ禍で、なかなか職場の仲間同士での飲食は難しいので、こうした機会にいかにコミュニケーションをとるかということにも心を配っています。」

「新入社員の壁として一番大きいのが、“電話の壁”です。私たちの仕事は債権回収ですので、お客様との折衝や返済の交渉を行うことが仕事に含まれます。電話や手紙を通じて、お客様の生活環境や収入面などを把握しながら、それに合った返済プラン等を提案する必要がありますので、そうした情報をいかに得ていくかというところがポイントであり大変さでもあると思います。」

「このあたりのフォロー体制も整ってきていると感じています。机の島にはパーテーションがないので、電話している人の声を前の席や隣の席の人がよく聞いていて、行き詰っているようだと助けてくれています。電話を代わることもありますし、切電後にこういう言い回しがよかったということを検証したりもしています。録音もしていますので、相手の声を聴きながら振り返ることもあり、さまざまな形でフォローできていると考えています。」

「人事面談で新入社員に話を聞くと、『職場の皆さんすごく優しいんですよ』と話してくれています。新入社員とは全然関係ない社員に教えてもらうこともあるようで、メンターやトレーナーという枠を超えて、机の島、大きく言えば会社全体で育てていくという意識ができてきたのではないかと思います。おかげさまで、新入社員の離職率は約6%(直近5年間)と、この債権回収業界においては低い水準であります。」

社員による提案制度によって、働きやすい職場づくりに社員も積極的に参加する環境が整っている

次に、働きやすい職場づくりのための取組みについてお話を伺った。

「業務時間管理は徹底しており、残業はあまりありません。残業をしなくても業務がまわる体制ができています。また、業務の中心がお客様との折衝ですので、社員個人で動くイメージがあるかもしれませんが、当社はどちらかというとチームで動くという特色が強くなっています。業務の最終的な目標は部門のチームごとに示しています。そのため、お互いにフォローし合いながら業務を進めることになりますので、休暇の取得などもしやすい環境になっています。育児中の社員には残業免除や時短勤務などの配慮もできています。」

「また、当社独自の取り組みとして、社員による提案制度があります。職場環境や仕事のことなどについて、『こうした方がいいのではないか』と社員が思うことを提案できるようにしています。所定の用紙に、提案内容とそれによって見込まれる効果を書いて所定の箱に提出してもらい、月に一度、役員会で検討して、実行できるものはすぐに実行しています。(【写真1】参照)」


【写真1】提案箱


【写真2】AED

「例えば、当社の入口にはAEDを設置しています(【写真2】参照)。これは、『万が一、誰かが倒れた時のために入れてほしい』という社員からの提案を踏まえて導入したものです。併せて、AEDを置いていても使えなければ意味がない、ということで心肺蘇生などの研修も実施しました。また、休憩室にwi-fiを入れたり、たばこを吸わない方のためにリフレッシュ休憩時間を導入したりもしました。」

「提案する以上自信をもって出してほしいという気持ちと、結果をフィードバックするために、提案は記名式にしています。一旦差し戻しになるケースもありますが、その場合は、採用しない理由や、一旦保留にするので今後の状況をこういう形で見てほしいといったことを伝えています。同じ提案でも、状況や環境が変わっていく中で、後日、採用になるケースもあります。結果は、採用であっても不採用であっても必ず全社員に掲示するようにしています。こうした機会を通じて会社の考え方を伝えることができている面もあるのではないかと考えています。」

管理職に対する研修の後、雑談形式で意見交換する時間を設けることで、管理職が日頃抱えている悩みを互いに共有し、話し合うことができている

最後に、心身の健康とコミュニケーションに関する取組みについてお話を伺った。

【写真3】研修の様子 「ストレスチェックは毎年実施しています。また、管理職に対しては、ストレスチェックの意義や、メンタルヘルス不調者の特徴と対応などに関する研修を実施しています。そして、研修終了後には、参加した管理職が日頃悩んでいることを雑談形式で話し合う時間を設けてみました。日頃、役職者が集まるという機会はなかなかありませんし、話す場をあらためて設けるとなると、身構えてしまうことも考えられます。研修後という機会が、ちょうどよく意見交換ができたのではないかと感じています。先日はハラスメント研修の後に意見交換の時間を設けたのですが、『こういう行為がダメなんだね』といった話から、建設的な話ができていました。四半期に一度くらいのペースで管理職が集まっての研修を行っているので、そういう機会を有意義に使えればと考えています(【写真3】参照)。」

「相談窓口としては、坂本とコンプライアンス部の男性、取締役の弁護士を設定していましたが、窓口の担当者を増やそうという意見がここ数年あったことを踏まえて、女性の担当者(事業部)も窓口に追加しました。内容によっては異性には相談しづらいと思いますので、それぞれが話しやすい人に相談できる環境を作ることを意識しています。」

「また、年2回健康アンケートを実施しています。悩みを相談できる人の有無や、喫煙・飲酒の状況などを訊いています。アンケート結果から、皆が“運動不足”というテーマを感じていることがわかったので、運動不足解消のため、コロナ禍でもできる取組みとして、アプリを使い歩数や距離を企業で競うイベントへの参加を昨年から始めました。社長と社外取締役の弁護士が率先して参加しており、社員の参加も少しずつ増えています。」

「イベントに参加することによって、『昨日はいつもより多く歩いたね』といったコミュニケーションが生まれており、体力的な面だけでなく、社内コミュニケーションの活性化にもつながっているのではないかと感じています。皆が頑張ってくれたおかげで、今年は上位入賞し賞状をいただきました。外で歩くので感染リスクは少ないですし、家族で歩くこともあると思いますので、社員だけでなく家族も含めた全体の健康の底上げにつながっているのではないかと思います。」

「新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたら、次の目標として大縄跳び大会のイベントに挑戦することを検討しています。同じ現場で一緒に経験するということができたらと考えています。今後も知恵を絞りながら、今できる取組みをやっていきたいと考えています。」

【ポイント】

  • ①新入社員を大事に育てる方針のもと、メンター制度や人事面談といった仕組みに加えて、日々の業務の中で他の社員が自然とフォローする体制が整っている。
  • ②社員による提案制度によって、働きやすい職場づくりに社員も積極的に参加する環境が整っている。
  • ③管理職に対する研修の後、雑談形式で意見交換する時間を設けることで、管理職が日頃抱えている悩みをお互いに共有し、話し合うことができている。

【取材協力】オリンポス債権回収株式会社
(2022年12月掲載)